雪の春節と眠られない夜



晦日(18日)深夜からチラチラとし出し、こちらは雪のお正月となりました。車もなかなか上がって来られないし、離石からのバスもおそらく不通で、村は静かな新年を迎えました。しかしいずれにしろ、賀家湾村では農暦初六、つまり春節の6日目から3日間、恒例の晋劇が開催されるので、その時に帰ってくる人の方がずっと多いようです。


今日は、総出で雪かき。給水車を上げるためです。




対聨など春節の飾り物は、大晦日の午後になってからいっせいに貼り出されます。私は毎年つぶさに観察しているのですが、この飾り物が、間違いなく、年々派手になって来ているのです。モノ自体は決して高いものではなく、せいぜい1枚1、2元から5元程度、紅いちょうちんでも1対で30元も出せば買えます。昔は買えなかった、というよりはむしろ、全体の雰囲気が、年々気分的に上向いているからではないかと、私は理解しています。


年があらたまる頃には爆竹が鳴らされますが、これは昔からの伝統にせよ、年々打ち上げられる花火が豪華になり、その数も多くなっているのです。村に来た頃には花火などありませんでした。そして、今年登場したのが電飾。私が確認しただけでも5軒ほどでチカチカ光っていました。上の写真は、村一番のお金持ちの家で、ウチの2軒隣です。

この家の3人兄弟の次男(40代)が出世頭で、近くの村で洗炭工場を経営しています。無煙炭を作る手前の過程のようです。典型的な“石炭成金”で、車はトヨタのプラドとワーゲンとアメリカ車と3台所有していて、今日も「3台もいらないから、アメ車はあんた乗っていいよ」などと、半ば本気でいっていました。腕時計は「オメガ」で、60万円以上するカメラも持っているようですが、聞いてもブランド名は知りませんでした。「ライカ」か「ハッセルブラッド」でも持っているのでしょう。タバコは1箱800円する「中華」、私がいらないといっているのに、1箱置いてゆきました。

「そんなにお金があって、使い道がないでしょう?」と聞くと、「2人の娘を外国へ留学させたいんだ」と、中国の成金では最も一般的な答えが返って来ました。で、恐らくは、娘たちはあまり乗り気でないのでしょう、とにかく私に「ウチに来て、娘たちと話してくれ」とうるさいのです。もちろん普段は村にはいないのですが、あと1週間ほどここにいるようで、私はうまいこと逃げなければなりません。

ところで私は最近、表題のように眠られない夜、というか、なかなか寝付けない夜を過ごしているのです。布団に入ってさあ寝ようと思うと、いつも“悪夢”が迫ってきて眠れず、おかげで、朝は9時か10時頃しか起きられないのです。どんな“悪夢”かというと珍しく“政治的”で、例えば:

台湾で有事が発生する。

当然、中国人民解放軍が介入してくる。

その情報をすばやくキャッチした“植民地なき帝国主義国”アメリカは、自らの利権が脅かされるかもしれない事態に対して、集団的自衛権を行使して中国に武力介入する。

ただし、自国の兵隊を死なせたくないアメリカは、無人の超ハイテク兵器をじゃんじゃん投入し、しかし、本土からはさすがに遠いので、日本の領海と基地を使う。

日本政府は“日本の国益”のために集団的自衛権を行使して、これまたじゃんじゃん燃料や物資をアメリカに提供する。

これに対して中国は、個別的自衛権を行使して、日本の基地を攻撃する。

けっきょくは、日本の兵隊がアメリカの手足となって、“アメリカの国益”のために戦い、おびただしい血と命が失われる。

こういったシナリオばかりが脳裏を行き来するのです。限られた情報の上に構築された“悪夢”ではありますが、はたしてこれらは私の単なる思い過ごしでしょうか?