復活予告

長い間留守にしてしまいました。心配してくださったみなさんすみませんでした。そしてありがとうございます。

私にとってトーマスさんの突然の死は大きなショックだったのですが、それを機に鬱のボタンにスイッチが入ってしまい、その後、躁と鬱を行ったり来たりしているうちに時間が過ぎてしまいました。それでももちろんやらなければならない仕事もあるし、そろそろ復活と思っていた矢先に、ISILの事件が発生したのです。

この問題に関しては、ここでは言葉がありませんが、私は30年くらい前にひとりで旅した、パルミラの遺跡や十字軍の城やベイルートの街角をずっと思い出し続けていました。今となってはなつかしくも麗しいかの地へは、もう誰もひとりで旅することなどできなくなりました。

パルミラで私に青銅のコインを“売りつけ”にやってきたクリクリした瞳の2人の少年たちは、たとえ一人でも、今も生きているのだろうか?野宿しようとしていた私を自分の家に泊めてくれたあのおばあちゃんの街が、シリア政府軍に爆撃されたというニュースは、もうずいぶん前に聞きました。路上で野菜を売っていたおじいちゃんの顔、「日本人はみんな友達だ」と陽気に笑っていたタクシードライバーの顔も、今でも思い出せます。

私は今は村にいます。日本に帰ってもテレビはないので、得られた情報は少ないのですが(それに、ネットをググるということもしませんでした)、ゆうべも夜中に突然目が覚めて、あの後藤さんの最後の画像が目の前にチラついて眠れませんでした。さぞかし無念だったことでしょう。何も書けません。

戦後レジームからの脱却」を悲願としていた安倍一派は、自国の若者ふたりをいけにえに捧げて、自らその幕を切って落としたことだけは間違いないでしょう。こんな状況の中で、まったくあっけらかんとした時間がのんびり過ぎてゆくこの村で暮らすことに、いったい何の意味があるのか、あらためて悩みますが、それでも当然のことながら、私には私のできることしかできないので、もうしばらくしたら復活します。