突っかいレンガ

すでに1ヶ月近くもたってしまいましたが、私が前に住んでいたイージャオの隣の家で工事が始まりました。今住んでいるところから、2軒隣のヤオトンです。

極々一般的なヤオトンですが、おばあちゃんが嫁に来たときにすでにあったわけですから、100年くらいたっているのかもしれません。

この人が、今年40歳になるこの家の次男で、賀家湾村の書記です。つまり村長より“偉い”人です。彼は「洗煤場」のトップだかナンバー2だかで、お金があります。なにしろ、村人は大体一箱2元とか5元くらいのタバコを吸っているのですが、彼は40数元の「中華」というタバコを毎日3箱吸っているそうです。愛車はPRADOで、実際に住んでいるのは離石です。

「洗煤場」というのは、文字通り石炭を洗う工場で、洗って「焦炭」つまりコークスにするのです。このコークスにするのはまた別の工場でやっているようです。

で、私はどこまでやる工事なのかよくわかっていなかったのですが、この写真の窓枠など、なかなかの手仕事だし、こういったものは残して、内部を改修するのだとばかり思っていました。

5月12日に、小型重機が入って、ヤオトンの裏山の上から穴を掘り始めました。どういう工程なのかよくわかりません。

ところが翌13日に行ってみると、屋根の上方の土をどんどん削って、庭にはすでに小山ができていました。いったいぜんたい……?と、ここで私はなつめを連れて北京にでかけたわけです。

それで18日に帰ってきたら、なんと、こんな光景になっていたのです。左下の白い部分は、もともとあったヤオトンの奥の壁の部分で、つまり工事は、部屋の改修工事ではなく、山を崩して更地にして、そこに新しく平房(ヤオトンではなく平屋)を建てる工事だったのです。書記が総工費20万元といっていましたが、およそ300万円ほど。日本ならこの更地にする工事だけで、いったいいくらかかるのでしょう?写真右上のヤオトンが、私が前に住んでいた部屋で、今でもバイクなど置いてあります。

で、例によって、タコ糸一本張って、レンガをじゃんじゃん積み上げてゆきます。とにかく、鉄筋というのはただの一本も使わないのです。その後に全体にセメントを塗りつけてゆくので、外観からはわからないのですが、四川地震で建物がぺしゃんこになるのも当たり前です。

それとこの削り取った背面の崖ですが、乾燥している間はいいのですが、黄土はいったん水に浸かるとあっという間にドロ状になって流出します。大雨が降ったら危なくないのかと聞いたら、「危ない」といっていました。写真をよく見ていただくとご想像いただけると思いますが、この崖は上半分の部分が下よりも迫り出した形状をしているのです。なぜ上部をもっと削らなかったのでしょう?

さすがに屋根にだけは鉄板というか、それ専用に加工されたブロック状のものが敷き詰められて、その上にコンクリートを流し込んでゆきます。

それで今日現在、工事はどこまで進んでいるかというと、ここ10日間ほど、このままの状態で停滞しているのです。つまり、突っかい棒ならぬ「突っかいレンガ」で、窓や扉の上辺が固まるのを待っているのです。まぁ後から窓枠は入るにせよ、危なくないんでしょうか?

工期は1ヶ月と聞いていたのに、この状態でそろそろ1ヶ月になろうとしています。実は隣のイージャオの庭いっぱいに、この家の雑多なモノ達がすべて移動していて、私も困っているのです。家主のイージャオはぜんぜん使ってないから気にもならないようですが、私は瓦礫の山の中でバイクも引き出せません。せっかく蒔いた松葉牡丹や矢車草の上にもどっさり大荷物の山です。畑に撒くくらいの水が井戸に残っているはずなのに、それも土砂で覆われて使えません。

その上に、実は昨日、待ちに待った恵みの雨が降ったのです。つまり、工事に来ている人たちはみな農民だから、他人の家の工事より、自分の畑仕事の方が大事に決まっています。これでまた数日間は再開が遅れることでしょう。なつめも居場所がなくなってほんとうに困っているのです。ありがたい雨だけれど、ほんと、早く始めて早く終わってほしいです。