“深刻な緑”

下のたんぼの案山子さんのコメントに応えて;

黄土高原というと、イメージとしてはなんとなく“砂漠”に準ずるような乾燥地帯を思い浮かべがちですが、実際雨は思っていたより降ります。統計によると、臨県の平均年間降水量は500mmほどあるようです。私がたびたびアップしている写真は、冬枯れの高原の景色が多いので、どうしても緑のない荒涼とした風景になってしまうのですが、今の季節は、畑にも谷にも民家の庭にもある棗がすべて開葉し、花も咲きそろい、小さな実をつけるときなので、がぜん緑が目につくようになりました。特に棗の葉は、つやつやと明るい色をした目に優しい緑です。あと、畑や庭に自家消費用の果樹を植えている家は多く、桃、林檎、梨などがあちこちにぱらぱらと目につきます。それから、エンジュの樹はかなり大きくなります。あと私が名前を知らない樹が数種類。雑草はもちろんほおっておけばほぼ地面を埋め尽くします。

以前に「退耕還林」というのをちょっと紹介しましたが、つまり、耕作を放棄して自然のままにまかせておけば、緑はもどってくるだけの自然条件は整っているのです。「退耕還林」というのは、行政が農民に補助金を出して耕作を放棄させるものですが、賀家湾には適用されてなく、樊家山には指定された畑があるようです。

ところで、賀家湾から離石に向かう40キロほどの幹線道路の両側は、比較的村落が少なく、山、つまり耕地が広がっています。そしてこの山並みが離石に近づくにしたがって、どんどん緑がもどってきているのに、最近あらためて気づきました。つまり耕作はされていないということですが、これがはたして「退耕還林」政策によるものなのか、あるいは“自主的”に耕作放棄したものなのかはわかりません。私の感触では、おそらくは、農民たちが出稼ぎに出てしまって、耕作をする人がいなくなった結果だと思います。

しかし、緑が戻るのはもちろん歓迎すべきことですが、農民が耕作を放棄してしまえば、当然食糧は買わなくてはならず、この傾向がどんどん拡大してゆけば、いずれ地域単位、省単位、いえ、国家単位で食糧は買わなければならない事態となり、つまり輸入しなければならなくなり、ではどこから輸入するのか?13億の民の胃袋を満たす食糧が果たして地球上に“余って”いるのか?

と、ここまでいえば極論ですが、都市部からジワジワと“深刻な緑”が農村部を侵蝕し始めているのではないかというのが、最近とみに考える私の“緑化問題”です。


(6月19日)