春耕というのはもうほぼ終わっているのですが、今もときどき見かけるのは、犂(すき)を曳く家畜の調達の問題かもしれません。賀家湾で、私が知る限りでは3頭しか牛を見ないし、馬は見たことがありません。農家で順番に貸したり、代わりに労働を提供したりしているのだと思います。耕地は普通は人力です。でも、黄土というのはほんとうに柔らかいので、あの広大な段々畑をどうやって‥‥と思うほどには困難ではないようです(もちろん重労働ですが)。

しかし、老人たちからよく聞くのは、日本人に家畜を盗られたという話で、彼らにとって高価で貴重な労働力を、日本軍は食糧として略奪したのです。しかも燃料に使ったのはヤオトンの扉や窓枠や家具や農具です(他に燃やせるものがないので)。昔はもっとたくさん農耕牛馬がいたのでしょう。今なら民俗博物館入りするであろう貴重な農具も灰燼に帰したわけです。

これらの写真はもう1ヵ月ほど前のものですが、賀家湾で撮ったもの。使い込まれた道具というものは、ほんとうに美しいフォルムをしているものですが、これほど私をうっとりさせた道具に出会うのも久しぶりです。

(4月28日)